先日、私の友人の依頼で、関東に十数の病院や介護施設を持つ医療法人の若理事長を訪問しました。
現場視察を終えた後、早速理事長から相談がありました。
「コムスンに端を発した介護医療問題をきっかけに、世間の介護事業に対する見方は日に日に厳しさを増しています。正直、行き過ぎではないかと思われる様な出来事も頻繁に起きており、最近はその対応に忙殺され、自分自身の仕事もおろそかになりがちです」と困っておられました。
「今、医療業界、特に介護の現場は、いつ秩序が崩壊してもおかしくない状況です。今後コンプライアンス遵守が叫ばれる中、本当に対応できる医療機関しか残っていけないと思いますが、そこまで対応できている医療機関は数えるほどしかないと思います。そして、ある程度対応している所といえば、これまででも相当現場担当者に負担が掛かっているはずなのに、コンプライアンス対応のために更に負荷をかけているはずですから、このままでは現場が崩壊してしまうのは避けられないと思います・・・」
この若理事長さんは本当によく現場をご存知でした。私の若理事長のイメージ(かなり偏見が入ってますが)と正反対の方でしたので、気がつくと私もかなり前のめりになってお話を聞き入っていました。
「最近、IT化で業務改善なんて話をよく聞くので、藁にもすがる思いでトライしてみようと思い、多くのITの業者さんともお話したのですが、(私の勉強不足が原因と思いますが)正直何がなんだか全く理解できなくて、導入の判断すらできませんでした。それで現場担当者に色々聞いてみたのですが、これ以上業務を増やされると現場が回せなくなります!の一点張りでなかなか前に進まず、本当に困ってます・・・」と苦悩の表情を見せられました。
そこで、私の方から次の様なお話をしてみました。
「先ず、ITの業者さんが持ってこられる提案は、自社の製品を売ることが大前提ですので、ピンとこなくて当然と気楽に考えてください。ある程度業界向けの解決策が出揃いこなれてくれば、その中から自社の現状に合うものをチョイスするというやり方もありますが、IT業界自体医療分野への参入はこれからの状況ですから、合うものが無くて当然ですよ」とお伝えしたところ、ほっとされたご様子だったので、話を先に進めました。
「IT化というのはなんだか魔法のツールの様に思われがちですが、人間が決めたルールに沿ってミス無く同じことを何度も繰り返すことが得意な機械でしかありませんので、過度な期待は捨ててください。その上で具体的な解決方法を考えますが、基本的には、現場の業務の流れを一から確認し、その中でITツールを導入した方が人的ミスが防げる部分と人間の深い思慮で対応した方が確実な部分に切り分ける、これが(面倒くさいですが結果的には)一番上手くいく方法なのです」とお答えしました。
そうお伝えすると、若理事長の顔が曇りました。
「ITの業者の方もそうでしたが、じゃあ、その作業を誰がやるの?という話ですね。現場担当者にこれ以上の作業を押し付けることが無理ですよ!」と強い口調で仰られました。
昔、IT化というと、業務の流れの分析(上流工程)を現場担当者がきっちり理解し、その流れの中でIT化すべき部分のみ専門業者に任せるというあたりまえの作業が行われていましたが、昨今IT化コストの大幅低減によりIT導入のハードルが低くなり、極端な話誰でも(お金さえ払えば)導入が可能な時代になってしまった事がこの様な問題が生まれた背景にあるのだと思います。
「ビジネスにおける武器は他社との差別化に必須のものですから、ITという武器についても、今後は使い方を理解し、使いこなせた企業のみが爆発的な成長力を身につけ、その他大勢の同業他社は規模縮小、更には業界最大手に吸収という道をたどらざるを得ない時代が来ると思っています。IT化の効果はなかなか理解されませんが、実はこういう細かいメリットの積み上げが突如、圧倒的な差となって現れる、そういう競合にとっては恐ろしいツールであることを経営者は知り、少しでも自社にどうやって導入すればよいかを専門部隊を構えて常に検証すべき時なんだと私は思います。1970年代から粛々とこの機能を構えている企業は本当に強いですよ。
一方で、昔は資本力のある企業しか導入できなかったのが、導入コストの大幅低減により、小資本でもアイデアと知恵さえあれば大企業なみの投資効果が得られるのです。設備投資や事業投資には無いIT投資の魅力を身に着けた中堅・中小企業もあっという間に市場を席巻できる時代になっているんです。そこに気づくかどうかが勝てる経営者かどうかの違いです・・・。」
とお伝えすると、若理事長は目を輝かせ、「うちも是非その様な機能を持ちたいので、是非ご指導願います」という流れになりましたので、次回は先日確認した現場の業務の流れの問題点の確認と、私が考えるIT化と人的業務改善の融合による画期的な業務改善案を提案することになりました。
その提案内容については、実際に現場に導入され、効果が現れたところでこのサイトでも紹介したいと思います。
10年ほど前から流通業の現場で行われている方法論を医療機関向けにカスタマイズしたものですが、結構上手くいく自信がありますので、ご期待ください。
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